【グッド・ウィル・ハンティング】君は自分の言葉が分かっていない子供だ

グッド・ウィル・ハンティングを今更初めて見た。

私は主演のマッド・デイモンが実はあんまり好きじゃなくて、ボーン・アイデンティティの筋骨隆々とした彼(ゴリラ)のイメージしかなかったので、人気だけどそんなに見る気がしない映画の1つだった。

だけどこれはK氏が好きな映画で、何故か突然思い立ったかのように酒を飲みながら「今度一緒に見よう」と言われたのだ。


見終わった結論として、とても良い映画だったなと思う。

ひとりの孤独な青年が人間の中で人間らしく生きていけるようになるまでの成長物語だった。

見たことがある人も多いと思うので、あらすじは割愛する。

とりあえず私が最も気に入ったシーンだけをピックアップしよう。

以下、主人公ウィルのセラピーを担当するショーン・マグワイアロビン・ウィリアムズ)が、対人関係を恐れてまともに会話ができないウィルに対して言った言葉。

君が絵について言ったことを考えた。眠らずに考えた。
ある結論が出てその後君のことを忘れてぐっすり眠った。


君は自分の言葉が分かっていない子供だ。ボストンを出たことは?


美術の話をすると君は美術本の知識を。
ミケランジェロのことにも詳しいだろう。彼の作品、政治、野心、法王との確執、セックス面での好み。
だがシスティナ礼拝堂の匂いを?あの美しい天井画を見上げたことが?


女の話をすれば君は好きなタイプを挙げる。女と寝たこともあるだろう。
だが女の隣で目覚め、真の幸せを感じたことが?


戦争の話ならシェイクスピアを引用。”もう一度突撃を 友よ”。
だが本当の戦争を?打たれた親友を抱いて息を引き取るのを見守る気持ち。


愛の話をすれば君は愛の詩を暗唱。
自分をさらけ出した女を見たことは?

目ですべて語っている女。君のために天から舞い降りた天使。君を地獄から救い出す。
君も彼女の天使となって彼女に永遠の愛を注ぐ。

どんなときも・・・癌に倒れても。2か月もの間病院で彼女の手を握り続ける。
医者も面会規則のことなど口に出せない。
自分への愛より強い愛で愛した誰かを失う。その悲しみと愛を君は知らない。


今の君が知性と自信を持った男か?今の君は生意気な怯えた若者。
だが天才だ、それは認める。天分の深さは計り知れない。
だが絵一枚で傲慢にも僕って人間を切り裂いた。


君は両親がいない。僕がこう言ったら?
”君のなめた苦しみはよくわかる「オリバーツイスト」を読んだから。”
どういう気がする?


僕にとってはどうでもいいことだ。君から学ぶことは何もない。本に書いてある。
君自身の話なら喜んで聞こう、君って人間に興味があるから。


およそ4分間に渡る長い台詞だが、このシーンを見てようやくこの映画が沢山の人に愛されてきた理由がわかった気がした。

私もまたウィルと同じで、実体験に乏しく本から得た知識で頭でっかちになり偉そうに他人を批判するところがあるので、ショーンの言葉が耳に痛い。

本を読むことは私にとって欠かせないことで、それは確かに人生を豊かにするものではあるけれど、それだけではわからないことも当然ながら世の中には沢山あるのだ。

そうだ、正に、ガイドブックを眺めているだけではシスティナ礼拝堂の匂いはわからない。


この長い独白を聞いて、ふと思い出したことがある。

確か詩人の谷川俊太郎さんが何かの詩集のあとがきに書いていた言葉だと思うけど・・・

百の詩も一輪のバラにははるかに及ばない、と。

詩を商売にする人がこんなことを言うので、衝撃を受けた記憶がある。

でもきっとこれがショーンが言ったことそのもので、この世の真実なのだろう。


その上で、この映画は更にもう一歩踏み込んだことを言っている。

セックスをしたことがあっても、朝女の隣で目覚める瞬間の幸福を君は知らない。

つまり、実体験があったとしてもそこに実(愛)がなければ意味がない、と。


4分間の台詞でそこまで教えてくれるショーン・・・すごいわ。

社会的な地位や名誉、最高だったベースボールの試合のチケットよりも誰かを全力で愛することを優先して、なのに早くにその愛する人(妻)を亡くしてしまって、それでも「まったく後悔していない」と言い切ることができる人生って、なんて素敵なんだろう。

いささか理想的過ぎる気もするが、こういう人生を生きたいという希望くらいは持ってもいいんじゃないかと、そんなふうに思える良い映画だったなと思う。