
- 作者: 楳図かずお
- 出版社/メーカー: 小学館
- 発売日: 2014/12/15
- メディア: Kindle版
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はい、たまには漫画のレビューを!
私は漫画も一通り有名どころは読んでいると思うのですが、父の影響でわりと古い漫画も読むことが多く、その中でも大好きな作品として"漂流教室"があります。
子供の頃はこの絵柄が怖くて(ストーリーも怖いが)姉と一緒に一生懸命本棚の奥に押し込めていたのですが、中学生になった頃に再読し「これすごい!」となりました。
あらすじは以下の通り(wikiより引用)
高松翔は、大和小学校の6年生。ある日、翔は母親とケンカをしたまま学校に行き、授業中に激しい地震に襲われる。揺れはすぐに収まったが、学校の外は岩と砂漠だけの荒れ果てた大地に変貌していた。突然の出来事に皆パニックに陥り、教師たちは全員亡くなってしまう。やがて荒廃した世界の正体が、文明の崩壊によって滅んだ未来の世界だと知った子供達は互いに協力し、大和小学校を拠点とした「国」を築くことを決意する。
要するに、未来へトリップした小学生たちが繰り広げるサバイバル漫画です。
昨今色んなタイプのサバイバル漫画が描かれているけれども、私は楳図先生がその先駆者の一人だったんではないかと思います。
そのくらい、サバイバル漫画としての基本要素のすべてが組み込まれているのではないかと。
荒れ狂う大人たちよ・・・(笑)
物語の始まりは、大和小学校を襲った突然の大地震。
この地震の影響によって、小学校が丸ごと未来に飛ばされてしまったのでした。
そしてあらすじにあるように、現実を受け止めきれない大人達が乱れる乱れる(笑)
結局大人のうち生き残ったのは関谷という給食のオッサンのみ。
このオッサン、給食を配達し来たタイミングで地震に遭うという捲きこみ事故を喰らった可哀想なヤツなんだけど、こいつが最後の最後まで本っ当に厄介で。
twitter.com至って真面目(むしろ地獄)なのに笑えるコマ。蒲生君好き。関谷は屑すぎて好き。#漂流教室 pic.twitter.com/jWKmbwpsSI
— ザオラル (@derorian1955) May 6, 2019
※まさにコレ(ニャーゴじゃねえよ!爆笑)
序盤では、配達した給食を「この食料は全部オレのもんだ!」と独り占めし、その上子供達が隠し持っていた食料を奪うため惨殺して回るという鬼畜っぷり。
仕舞いには腕力で敵わない子供達相手に独裁政治を始めます。
なんというか、土壇場に追い込まれた人間の利己的な部分が前面に押し出されたような人格で、こいつさえいなければ・・!と思うことが多い反面、狂言回し的な必要悪だったよなーと思う。
学校を治める子供達
関谷を撃退した子供達は、放り出された不毛の土地の中でどこかに文明が残っていないかどうかを探し始めます。
そして朽ち果てた廃墟を見てまわるうちに、自分達がどうやら未来へ飛ばされて来てしまったことを悟るのでした。
現実を受け入れた子供達は次に、“学校を拠点として国を作り、統率された生活を構築する”ことを目指します。
民主主義国家に則り、総理大臣を始めとした担当大臣を全校生徒の投票で任命。
大臣の任に就いた子供達は、生きるために必要なそれぞれの分野を司り、その責務を全うしていきます。
小学生がそんなことできるのか?って思われるかもしれないけれど、社会の仕組みは小学6年生にもなれば習っているわけだし、子供達は学校で教わったことを生きる術として即実践しているだけなんですよね。
作中でも、「何故毎日学校で勉強なんかしなきゃならないんだろう」「こんなこと習って将来役に立つのかな」とずっと思っていたけど、きっと僕たちが勉強してきたのはこの時のためだったんだ!と子供達が言い合うシーンがあります。
逞しいです。おばちゃん泣いちゃう・・・。
好きなシーンセレクト
書こうと思えば延々と書き続けられてしまいそうなので、とりあえず好きなシーンをピックアップして紹介。
1.防衛大臣の池垣くん
大和小学校を襲った巨大怪虫事件。
ここで特筆すべきは、防衛大臣として自ら前線に立ち怪虫と戦った池垣くんでしょう。
池垣くんは少数精鋭の仲間だけ連れて防火シャッターを下ろし、皆を逃がした後に怪虫に立ち向かっていきます。
特攻を美化しようとは思わないけど、一緒に前線に残ろうとする翔ちゃんに「ここは防衛大臣である僕の役目だ!僕が命令する!」と言い切る池垣くんは本当にすごいと思う。
もちろん巨大怪虫に彼らが敵うはずがないのですが、池垣くんはリーダーとして最後まで戦い抜きました。
生き残った翔ちゃんが見つけた時には、池垣くんはボロ布のようにズタズタにされて死んでいました。
衝撃的なシーンだけれど、胸に残ります。
ちなみに楳図先生は池垣くんがお気に入りだったようで、後に彼の容貌はそのままグワシのまことちゃんに引き継がれています。
2.未来人類の起源
次に、学校の庭園に突如生えてきた未来植物を食べて異形の未来人類に子供達が変わってしまう事件が起こります。
この未来人類は、生態系が崩れた地球で人間の奇形児として産まれた赤子が祖先とされています。
蛙のような姿で、とてもじゃないけれど人間には見えない。
閲覧注意としか言いようがないので、巨大怪虫と共に検索はオススメできません。
大和小学校の子供達も彼らのことを始めはただの怪物だと思いますが、やがて高度な知能を持った未来人類であることを知ります。
その起源を、未来人類の集会を覗き見た翔ちゃん達が映像の記録を通して目の当たりにするのですが、そのシーンがなんとも秀逸で!(以下のブログで上手くまとめていらっしゃったので、引用させていただきました。青字はわかりやすいように私が実際の漫画の描写を追加してます)
ここにわれわれの祖先の誕生が明確に映し出されている。(8ミリフィルムらしきものを映しながら)
奇形魚の誕生。オニヒトデ大発生の記事。
母親がまたも嬰児殺し、の記事。そして土に中から掘り起こされた「奇形」の嬰児の姿。
ああ、これをみている人々の表情をみてもらいたい。
これはただのおどろきの表情だろうか。
もしやこのなかに、同じ経験を持つ人がいるのではないだろうか。
この後に続く風景は、彼らの心象風景を物語っている。(生花ではなく、3D映像の花をショーウィンドウに飾っている。子供がそれに触れようとすると消えてしまう。)
かれらのまやかしの文明は、急速に進んだ。しかしそれは自然をいかにうまくまねるかという文明だった。
真実とマネとが次第に入れ替わっていった・・・。
その極限にかれらの終末があった。
不治の病とされたガンもなおるようになった。
だがその代償は誰も払わなかった・・・。
雨だ・・・・。(雨が降る様子を撮影している)
こう念入りに撮られているのはきっと雨の降ることが少なくなったからだろう。
だが偶然にも、ここにすべての答えが語られているのだ。
たとえば人類とは何か・・・。
人類といううつわに水が完全に溜まりきったっとき、それが初めてわかるのだ。
みるがいい、これが人類だ!
だが溜まった水は引くことがない・・・。
ついに水たまりの一部が敗れる。・・・。流れ出た水は。別の場所へと流れていく・・・。
そしてほかの場所であたらしい水たまり、つまり別の器を見つける・・・。
これがわれわれだ!
ゾッッッとしませんか??!!
私は子供の頃読んだ時はこんな未来がいつか来るのか・・という怖さしか感じなかったのですが、大人になってから読んでみたら、何コレ予言???と思いました。
楳図先生はやっぱりスゴい。
地球の資源を放蕩した人類がこの先どのような結末を迎えるか、漫画を通して警鐘を鳴らしているように思えませんか。
自ら破壊した地球に住めなくなった人類は、こうして新しい環境に適応した形態で未来人類として生き延びている。
しかし彼らのことを人間と呼んで良いものかどうか・・・(共食いもするような生き物ですから)。
長くなりそうなのでパート2へつづく。