【漂流教室】楳図先生は妖精(2

abomi344.hatenablog.com

前回からのつづきです。


好きなシーンセレクト 2

3.「ただいま」ってなんて良い言葉なんだろう

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このシーン・・・泣いちゃいます。(勝手ながらツイートを引用させていただきました)

突然人類が死滅した未来にタイムスリップしてサバイバルを余儀なくされた幼い子供達が、いつも何げなく言っていた言葉である「ただいま」

ただいまー!って言って帰れる家があるって凄く幸せなことなんだなと。

この時から、子供達の間では「ただいま」が合い言葉になるのでした。


しかも、「ただいま」は楳図先生にとっては漂流教室の裏テーマであり、もしかしたらこれがタイトルになるかもしれなかったという逸話もある。

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絶対に帰れないけれどいつか家に帰ることを夢見る子供達にとっては両極にあるような言葉をタイトルに使おうとしていたなんて、どう思えば良いのやら・・・(涙)


4.大好きな大友くん(※ネタバレあり)

主人公である翔ちゃんのライバル的存在ですね。

クラス委員長である彼はガキ大将の翔ちゃんに比べれば成績も優秀ですが、人望は翔ちゃんの方があるようで翔ちゃんが総理大臣になる側ら大友くんは厚生大臣に任命されます。

タイプの違う彼らですが、2人とも皆を引っ張っていけるだけの強いリーダーシップを持ち合わせています。


しかしサバイバル生活を続けて行くに連れて彼ら2人の意見が対立し、小学校は高松派と大友派の2つの派閥に別れてしまいます。

一貫して「強い者が弱い者を助け、皆が協力して生き延びるべきだ」という主張をする翔ちゃんに対し、大友くんはそんな綺麗事を言ってられないくらい自分達は追い込まれている(この時点で子供達は飢え始めています)、一人一人が生き延びるのに精一杯なのだから自分のことは自分で面倒をみるべきだという旨の主張をします。

昨今支持されがちな「自己責任論」ですから、現実にも自分は大友くん派だ!という人が多いのかもしれません。

でも、そんなことを言ったら「自分の面倒をみられない小さな1年生達はどうなるの?!(by咲っぺ)」という話なんです。

現実社会にも、一人ではどうしても生きていくのが難しい人たちがいますよね。

大和小学校はさながら社会の縮図のようです。


少し話が逸れました。

私が大友くんが大好きな理由は、彼が登場人物の中で最も人間らしいからです。

人間の弱さ汚さを収縮したような面を見せるのだけど、土壇場で正しい選択をすることができたことが、彼の最大の魅力だと思います。


物語の終盤で、大友派の子供達が「未来に来てしまったのは高松(※翔ちゃん)のせいだ!」という根も葉もない噂を流し、翔ちゃんが支持を失ってしまう事件が起こるのですね。

でも実は、皆が未来に来てしまったきっかけを作ったのは大友くんだったのです。

大友くんはずっとそれを黙っていて、彼自身も「高松のせいでこんなところに来てしまったのだ!」と翔ちゃんを責め抜き、殺害する寸前のところまで追い詰めるのだけど、直前で踏みとどまります。


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これな。


一緒に読んだことのあるうちの姉なんかは、「最後の最後に白状してゆるしてくれー!!ってクズやん(虫が良すぎるでしょ)」と言っていたけど、白状したら殺されるかもしれない状況で正直になり翔ちゃんを助けたのは立派なことではないでしょうか。

そしてそれを許した翔ちゃんもスゴい。子供はスゴい。


大友くんは、未来に来る前から優等生を演じる生活に厭気がさしていて、自殺をしようかと考えるほど追い詰められていました。

そこで腹癒せに学校にダイナマイトをしかけて爆発事故を起こしてやろうと考えていたのです。

また、大友くんは元々劣等生の翔ちゃんの方が皆の人気者であることにジェラシーを抱いていて、さらに作中のヒロインである咲っぺに片思いをしていました(しかし咲っぺは翔ちゃんが好き)。

自分が欲しいものを全て持っているように見えた翔ちゃんが嫉ましかったのですね・・。

なんともいじらしいじゃないですか!!!!


私は、漂流教室に限らずこういうキャラが堪らなく好きなんですねー。

彼らは彼らで物事に対してすごく真剣で努力家で、でもなんだか上手くいかないことばっかりだから、報われないことに絶望しているだけなんです。

でもそういう人が立ち直ったら、本当に強い。

この性癖(?)をわかってくれる人、いないかなーー。


帰れなかった子供達

物語のラストとしては、結局大和小学校の子供達はとうとう現代に帰ることができませんでした。

子供の頃は「バッドエンドかよ・・・」と思っていたのだけど、大人になって読み返してみると、いやいやこれは最も好ましいラストであったと改めて思いました。

彼らは未来でなんとか生きていける足がかりを見つけたことで、最後の最後に現代の家に帰ることを諦めます。

もっと言うと、現実的に全員が過去に戻ることは難しいと悟った彼らは、「希望を持って今を生きていくこと」を決断するのです。

それは正しい選択だったと思います。

まあ一人だけ過去に戻る子供もいるのですけど、これは未来のための布石と言いますか。

ともあれ、これだけ完成度の高い漫画はなかなか無いと思うので、是非多くの人に読んで欲しいと思う限りです。


楳図先生は妖精

おまけですけど、吉祥寺(まことちゃんハウスがある)に行くと楳図先生があの赤白ボーダーを着て歩いているところに遭遇することがあるそうです。

でもファンの間では、「楳図先生は妖精なので見かけても声をかけてはならない」と言われているそうで、私も吉祥に行く時はもし先生を見かけることがあっても物陰から見つめるだけで留めようと思っています(ただし、せめてもの自己主張として吉祥寺に行く時は私も赤白ボーダーを着るというマイルールを設けている)。


さらに楳図先生は、昨年フランスのアングレーム漫画祭で「遺産賞」というものを受賞しています。

遺産として永久に残すべき作品と認められた漫画に与えられるものだそうで、楳図先生は「わたしは真悟」という作品で受賞しました。

日本では、水木しげるの「総員玉砕せよ!」と上村一夫の「離婚倶楽部」に続き3人目の受賞者となるそうです。

スゴー。

わたしは真悟」もホラー要素はなくてSF感たっぷりな作品となっておりすごく面白いので是非読んでみて欲しい!


では、唐突に終わります。