本を読んでいる時、エンジンがかかるとある瞬間から次のページをめくる手が止まらず、それこそ寝る間も惜しんで夢中で読み進めていることがあります。
そんな時の自分は無機質な文字を追っているのではなく、ただただ物語の中にのめり込んでいるような感覚があります。
昔、テレビでピースの又吉さんが「本の中に顔がめり込む瞬間がある」というようなことを言ってました(たぶん読書芸人で)。
今回は、そんな幸せな読書をしているといつもふと思い出す本について書きます。

- 作者: わたりむつこ,本庄ひさ子
- 出版社/メーカー: 岩崎書店
- 発売日: 2015/03/02
- メディア: 単行本
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小人の”はなはな”と”みんみ”は、よく似た双子の兄妹。 ふたりは父さんの”たけび”、母さんの”ひいな”、そして”白ひげじいさん”と 一緒に、『銀色つのの山』を取り囲む森の南のはずれに住んでいました。 かつては自在に魔法を使い、地上で最も賢く力ある種族だった小人一族。 それが今、たった5人になってしまったのは、過去に起こった<小人大戦争>のためでした。
ある日、小人たちは、はるか北の海岸で小人の姿を見たという知らせを聞きます。 激しい戦いの後、死に絶えてしまったはずの同族が…。一家は、仲間を求めて北の森へ旅立ちます。
もともと母が好きだった本で、いつか自分の子供にも読んで欲しいと思っていたそうで、古い版がずっと実家に置いてありました。
それを私が小学校高学年くらいの頃に手にとって実際に読み始めました。
長編のファンタジーを読んだのはたぶんこれが初めてです(もしくはペギー・スーが先か?)。
まず、絵がなんとも可愛らしいのでぜひぜひ見ていただきたい。

- 作者: わたりむつこ,本庄ひさ子
- 出版社/メーカー: 岩崎書店
- 発売日: 2015/02/18
- メディア: 単行本
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私は絵本や児童文学の中に出てくる美味しそうな食べ物がすごく好きなんですけど(王道で言うと、ぐりとぐらのカステラケーキみたいな)、はなはなみんみ物語も例に漏れず、はじめの方に小人の家族が皆でくるみパンを作って食事をするシーンがあります。
これを読んだ後、どうしても食べたくなって、母に頼んでくるみパンをわざわざ焼いてもらった記憶があります。
しかし、ほののん、ほんわかとした絵とは裏腹に、話の内容はかなり現実的なものです。
何しろ<小人大戦争>で絶滅したと言われる小人族の話なので、戦争が主題に掲げられています。
著者は戦争が未来に何を遺すのか、ということを描くことにとても注力していたと思うので、今思えばもしかしたら戦争経験者だった可能性が高いですね。
その中でもひときわ心に残ったのは、はなはなみんみたちがとある森を訪ねた時、森の木々が彼ら小人族が侵入してきたことに怒り、攻撃的な態度を取るシーンです。
彼らが小人を拒むのは、かつての<小人大戦争>で小人達が森の木を切ったり焼いたりして無造作に扱ったからという理由がありました。
木は小人よりもずっと寿命が長いので、戦争があった当初から世代が入れ替わっていない木々がまだその森には残っていたのですね。
はなはなみんみたちは、「戦争をしたのは昔の人たちで、ボクらがやったことではないから責められても困る」と一度は反発します。
しかし後に「戦争をしたのは昔の人でも、ボクらが小人であるかぎり、過去の小人がしたことはボクらに責任がある」
「こうしていつまでも、昔あった出来事に傷つき、哀しんでいる人がいるのだから」という結論に至ります。
原文のとおりではないですが、そういう話の流れだったと思います。
子供心に、そのとおりだなあと思った記憶があります。
現在の日本でも、過去の日本人がやったことに責任を感じず、それどころか【それは事実ではない】【無かったことだ】と言って憚らない人がいますが、そういうニュースを見るたびにもっと真摯に歴史と向き合わなければと思います。
歴史と向き合うためには、データを残すことが必須であり、それは書籍や文書、これからは電子データの形を取ることもあるでしょう。
だから現政権の公文書改竄とか、無断破棄とか、本当にあり得ないんですよね・・・。
公文書を隠したり、勝手に捨てている時点で当然内閣総辞職だし、当事者は捕まるべき罪だと思うのですが。
と、話が逸れてしまいましたが、少し重めのテーマを扱ってはいますが、ファンタジー要素はたっぷりだし、子供心を擽るシーンも沢山出てくるので、この本はぜひぜひ子供のうちに読んで欲しい!
もの凄くわくわくして、続きが気になって仕方なかった思い出しかありません。
子供の頃の楽しい読書は、やはり格別だと思うのです。