Amazonプライムでレンタルできるようになっていたので、先日初めて話題(だった)のジョーカーを見ました。
事前に、リバー・フェニックスの弟であるホアキン・フェニックスがいい! という声を聞いていたのですが、私は全然彼のことを知らなくて、あと若くして亡くなった兄の印象が強かったので、ホアキン・フェニックスが普通にオジサンだったことにまず「あれッ!?」となりました(笑)
そうだよね。
私の身近な人間で言うと、姉と夫はふたりとも「ジョーカー面白かった!」と言っていました(ふたりともちょっと病んでるからかな)。
夫は歌舞伎町の映画館で見たそうなのですが、帰ってきた時に「あそこは東京のゴッサムシティだ・・」と言っていました。やめろ(笑)
そして姉は「どっちかっていうと渋谷の方がゴッサム感が強い」と言っていました。
こうしてゴッサムは形容詞になったのだ。
姉は、極度の緊張等のストレスに晒された時に「笑う」という症状が出てしまうホアキンの演技に胸打たれたようです。
なるほど確かに、途中で薬ももらえなくなってしまうし、笑っちゃマズいシーンで笑ってしまうのを抑えられない彼の気持ちを考えると、見ているこっちも思わず本気で辛くなってしまうような演技でした。
彼の辛さの根源は、病気や貧困、仕事に恵まれないことなど生活にダイレクトに影響してくる困難そのもの自体よりも、一生懸命生きようとしているだけなのに、理不尽な暴力や嘲笑に遭い、著しく自尊心を傷つけられるその精神的な痛みの方が深刻なのだと思います。
最初の方は、辛い境遇ながらも彼は「コメディアンになりたい」という夢を持っていましたしね。
それが、父親だと思っていた人から冷たくあしらわれたり、隣人の女性と恋人のように仲良くなったと思っていたのが自分の妄想であったことに気付いた時に、ギリギリのところで保っていたものが一気に弾けとんだような印象を受けました。
だから、彼は病気だったのかもしれないけど、気が狂っていたわけではなかったと思うのです。
吹っ切れた後の彼が、町中の階段で踊るシーンは後の映画史に残りそうです。
そういう魅力を感じました。
しかし全体の感想としては、個人的には物語の目新しさは感じられなかったし、特に「心動かされる」というほどではなかったかなーというのが正直なところです。
タクシードライバーのオマージュ的作品だと事前に聞いていたので、余計にそう感じたのかもしれません。
銃を手に入れて一人きりの部屋で構えてみたり、奇抜な格好をして著名人の暗殺を企てたりするところなどは、完全にタクシードライバーを摸しているシーンでしたね。
タクシードライバーの主人公であるベトナム帰還兵のトラヴィスは、戦争の後遺症で不眠症になってしまったので、「どうせ夜眠れないのなら」という理由でタクシードライバーになりました(他に働き口もなかった)。
彼は夜な夜な繁華街の道を車で通りながら、「雨が汚いものすべてを洗い流してくれればいい」「どいつもこいつもクズばっかりだ」「だれも生きてる価値はない」と呪いの言葉を呟いています。
そして溜まりに溜まった鬱屈した感情を、政治家の暗殺というかたちで昇華させようとする。
これですこれ。ロバート・デ・ニーロの有名すぎるあのシーン。
“You talkin to me?”
くそかっこいい。
彼がまさか、ジョーカーにぶち殺される役とは・・・(笑)
もう1つタクシードライバーとジョーカーの共通点だと感じたのは、ふたりとも女性に捌け口(と言ったら聞こえが悪いね)を求めているところ。
私にはわからないのですけど、男性にとって社会的な閉塞感や不満などは、性的な欲求不満と結び付いているものなのでしょうか?
もちろん、性欲だけじゃなくて、精神的な安息とか、そういうものも含めてだとは思うんですけど。
女性の場合は何か明らかな不満があった時に「男性を強く求める」ってことは、あまり無いんじゃないかと思ったので(それとも他の人はそうなのだろうか)。
原因が別にあるのなら尚更そうです。
これは揶揄ではなく、切実に疑問に思っています。
先にも書いたように、私自身は、ジョーカーの辛さ根源は「認められないこと」への「惨めさ」なのかなと思いましたが、タクシードライバーの場合は、もっと病的な何かを感じました。
トラヴィスが何を考えているのか、よくわからないからかもしれません。
たぶんベトナムでいろいろあったんでしょうが・・(敢えてそれに触れずにPTSDを描いているのだと思います)。
それに比べると、ジョーカーには具体的な人間的痛みがありますし、なんとなく、コメディアンを撃ち殺す気持ちもわかるわけで。
とかなんとか色々言ってますが、タクシードライバーに関しては思い出しながら書いているので定かではありません(笑)
ちなみに私はダークナイトは一応見ましたが全く記憶に残ってません。
アメコミ系はどうも…好みの問題ですね。
なので、元のジョーカーというキャラを知らないので、ただただ今作品を見て受けた印象だけで感想を書きました。
ジョーカーの、ギリギリまで追い詰められた結果、猟奇的な衝動に身を委ねるあの感じ。
私にはやけくそに見えました。彼は狂っているわけではないと思う。
荒れ狂うゴッサムの民にワッショイされてる感(=世間の風潮に踊らされている)も、最後の恍惚とした様子を見るに完全には否めなかったしなあ・・・。
彼のような人があんなにも評価される世の中って、いつか来るんでしょうか。
それとももう来ているんでしょうか。
そんなことを考えた作品でした。