【13の理由】子供が社会を生き延びることの難しさを描いた作品(season2~4)

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abomi344.hatenablog.com

ネットフリックス限定配信ドラマ「13の理由」をseason4まで見終わりました。

言わずもがなseason1が一番面白かったのですが、前回のレビューを見ていただければわかるとおり、私は始終怒りながら見ていました。

season2まではずっとそんな感じで、見ているのが辛い時もありましたね。

10代のハイスクール男女を中心とした、苛め、レイプ、ドラッグ等が題材であるため、そりゃ軽い気持ちで見られるハズがないのです。

今回のレビューは、season4までまとめて書きたいので、なるべく短くまとまるように努力してみます。でも無理かも。


season2 物事はひとりの主観では語れないと知る

自殺したハンナが、自分が死ぬ13の理由を吹き込んだテープの内容が明かされるのがseason1。

season2では、ハンナの両親が学校を相手に裁判を起こし、「娘が苛めやレイプの事実について救済を求めていたのにもかかわらず、学校は何もしてくれなかったのではないか?」と訴えます。

証人として裁判に召集されたのは、テープに登場する同級生や教師達。

ハンナを助けたい人たちは、ハンナにとって不都合な事実は隠して上手いこと彼女をフォローしたいと考えるのですが、裁判では損得関係なく「本当に起きたこと」が暴かれていきます(レイプ犯や一部の証人は、自己保身のために虚偽を語りますが)。

すると、season1を見ているだけでは分からなかったハンナの一面が明らかになり、テープの内容は、あくまでハンナの主観で語られていたのだと視聴者は悟ることになります。

この作りが、なるほど、秀逸だなあと私は感じました。


結果的には、学校側の責任を追及することはできず、ハンナの両親は敗訴するのですが、その際のハンナの母の言葉が印象的でした。

「完璧な被害者などいません。娘は普通の17歳の女の子でした」

そりゃそうだよな、と思いました。

ハンナだって普通の女の子なんだから、ちょい悪っぽい男の子に惹かれることもあるだろうし、楽しいパーティーにも行きたいし、好奇心でドラッグに手を出してみたりすることもあるだろうし(なんか、ドラッグに関しては種類にもよるけど煙草を吸うのと同程度の気軽さを感じた。これってアメリカの文化?)、複数人の男の子とキスくらいはするだろう。


しかし、苛めや性被害の場合は「被害者にも何らかの落ち度があったんじゃないか?」という論議が起こりがちなものです。

でもその人がどんな性格だろうと、どんな見た目をしていようと、どんな格好をしていようと、どんな環境で育っていようと、それを理由に人を貶めて良いことにはならないよね。

被害者の言動に責任を求めるかどうかという問題もありますが、それでも苛めやレイプを正当化することは到底出来ないと思うのです。


裁判とは「そういうものだ」ということは頭では理解しつつ、真実を語ることでハンナにとっては不利な発言をしてしまうことになってしまった友人達が可哀想だった。

そして、学校側の弁護士に皆すごく迫られ責められながらの証言だったけど、あんなやり方されたら、冷静に話すことが出来ない人がほとんどなんじゃないだろうか。

誘導尋問めいた部分も沢山あったし、そういうのも含めて裁判なんですかね。



season3~4 被害を訴えること「私は生還者である」

season3では、なんと、学校のキング的存在だったブライスの殺害事件から幕を開けます。

ブライスはseason1でハンナとジェシカをレイプした張本人なのですが、season2では虚偽の証言をしてまんまと罪を逃れています(社会的制裁は受けていましたが)。

そんな彼が、何者かに殺されて発見された。


容疑者として警察から真っ先に疑われたのが主人公のクレイでしたが、最初に報道されたブライスの死因が銃による殺害だったため、仲間内ではseason2の最後にライフル銃を持ってパーティーを襲撃しようとしたタイラーが最も疑われていました。

タイラーは、ブライスの友人(手下?っぽくもある)であるモンゴメリーに激しい暴行を受けていました。

この暴行の内容が、ラストシーズンまでずっと「性暴力には本来男女の垣根がない」ということの象徴的な出来事として語られていた様な気がします。

タイラーは、モンゴメリーから無茶苦茶に殴られ、壁や洗面台に頭を打ち付けられ、トイレの中に顔を沈められた後に、モップの柄を使ってレイプされたのです。

恐ろしくて、見ながら半分以上目を被ってしまいました。タイラーが殺されてしまうのかと思った・・・。


当然ながら、彼はなかなか自分の身に起きた出来事を語ることができません。

学校生活では誰も助けてくれず、モンゴメリーと廊下ですれ違うだけで凍り付き、「体の一部が無理矢理あの時に引き戻され」てしまいます。

その多大なストレスがやがて暴力的な衝動に変わり、最終的にはライフルを購入して沢山の同級生達が参加しているパーティーを襲撃しようという過激な考えを生ませました。


season3でタイラーの異変に気付いた元スクールカウンセラーからアドバイスを受けたクレイが、彼に直接そのことについて尋ねた時にようやく絞り出した告白が、あまりにも哀しくて、痛々しくて、見ていて涙が止まりませんでした。

タイラーは、その出来事について「彼(モンゴメリー)は、モップの柄を僕の中に入れて、血が出るまで何度も何度も抜き差しして、そのまま僕をトイレに残して去って行った」と言います。


AVでもレイプものって沢山在りますよね、その中では、女性は嫌がってはいても血は流していないかもしれません。

しかし、実際のレイプは、タイラーが語るように紛れもなく暴力なのです(もちろん血を流していなければ良いということではない)。

きっとドラマ内ではあまりにも生々しすぎて女性相手に血や殴る蹴る等の暴力を伴うレイプを描けなかったのだと思いますが、敵わない力を持つ相手に無理矢理体の中に異物を入れられることへの嫌悪や衝撃は、男女関係なく計り知れないと思います。

そのことが、タイラーへの暴力を見ていると、手に見て取れる。きっと男性でも。



また、生徒会長となったジェシカが生徒達の前で自分の身に起きたことをはっきりと語り、最後に「私の名前はジェシカ・デイヴィス。私は生還者(サバイバー)です。」とスピーチするシーンには胸が熱くなりました。

その声に触発されて、多くの女生徒達が、同じように自分の名前を述べて「私はサバイバーです」と続く。

勇気を振り絞ったタイラーは、男性の中で一番初めに声を上げました。

season1から考えると物凄い成果だと私は思います。


そして、「生還者(サバイバー)」という言葉にも、何か胸に残るものがありました。

だってハンナは生還することができなかったんだから。

何かがほんのちょっと違うだけで、ハンナもジェシカのように自分の身に起きたことに立ち向かう勇気を持てたかもしれません。

でもそうはならなかった。ほんの少しの差だったのだと思います。


ここで思い出されるのは、season2の終わりに、ハンナの母がクレイに渡した、生前のハンナが書いた「11の死なない理由」のリスト。

11個の理由の中には、何度もクレイが出てきている、とハンナの母は言いました。

「2つ足りなかったのね(死ぬ理由に比べて)」
「娘には見付けることができなかったけど、生きる理由は絶対に13以上ある。あなたは生き延びて」


17歳なんて、絶望するにはまだ早すぎる。

でも、ハイスクールという狭い世界しか知らない、逃げ場のない子供達は、いとも簡単に絶望してしまう。

大人は、そうならないように子供達を守ってあげなきゃいけない。



逃げ場の無い子供たち

ブライス殺人事件の犯人が誰だったのか、どんな結末だったのか、ということは、私にとってあまり重要なことではなかったので敢えてレビューの中では触れません。

初めの方こそ女性が受ける性被害に焦点を当てていましたが、最後まで見て気がついたのは、このドラマは一貫して「傷ついた子供たち」を描いているのだということ。

自殺したハンナについて掘り下げた後に、ではハンナを傷つけた人たちは、一体どんなパーソナリティで、どんな環境の中で生きてきたのか? ということに話がスライドしていきます。


もちろん、ブライスがしたことは絶対に許されません。

しかし、season3の時点では、彼は自分の行いを見つめ直し、猛省して「なんとか生まれ変わりたい」と願って実際に行動していました。


ブライスだけでなく、モンゴメリーの身の上にも問題があった。

産まれた時からの家庭環境が、彼等にとって心安まる場所ではなかった。

だからと言って誰かを傷つけて良い理由にはなりませんが、もし彼等に初めから心許せる人、心安まる場所が与えられて入れば、無暗に他人を傷つける人格は育たなかったのではないかとも思うのです。



子供達は、逃げる場所が無くて可哀想です。

居場所もなく、お金もなく、時間もなかったら、社会のレールから外れること(不登校や、非行、自殺等)でしか現実から逃げることができません。

そして一旦そのレールから外れてしまうと、軌道修正がしづらい社会のしくみなのが現状ですよね。

このドラマを見ていて思い出したのは、「ああそうだ・・・子供時代って不便だった」ってことです。

その点大人は、長く生きた分だけ自分の機嫌の取り方を心得ているし、大人にだけ許された気分転換の方法も沢山あります。


ハンナにも、知って欲しかったなあ。

大人になったら、無理して自分を傷つけてくる誰かと同じ環境に居続けなくて良いし、どこへ行くにも自分で決められるし、沢山の楽しいことがあるんだよ~って。

大人になるまで生き延びて、自分を食べさせてやるくらいのお金を稼げるようになれれば、こっちのもんだよ(今の日本社会の場合は自立するだけのお金を稼ぐのも難しくなってきているのが現状だけど・・・)。

私はこのブログの中で何度か書いていますが、絶対に子供時代よりも、大人になってからの方が人生楽しいよ。



性教育の必要性について

性交渉の同意については、私や一緒に視聴した夫も含め、多くの子供達にとって「誰からも教わっていないこと」なのだと改めて痛感しました。

男女の体の構造や妊娠・出産のしくみ、性病の予防に関する知識と共に、こういうことも何とかして今後の教育に取り入れられていかないかなあ。


いい加減、個室居酒屋やカラオケの誘いに応じた、家に遊びに来る(行く)のに応じた、旅行に応じた、それすなわち「セックスへの同意」と捉えるのを辞めて欲しい。

相手にその気がなくても無駄に警戒しなければならなくなるし、そういう暗黙のルールが横行しても良いことなんてひとつも無いと思う。

私個人の感覚で言うと、セックスをするために二人きりになれる環境へ誘おうとしたり、やたらと旅行に行きたがったりされると、相手に対してある種の「情けなさ」を感じてしまう。

明らかに魂胆が読める遠回しな努力をするくらいなら、ハッキリ「しても良いか?」と尋ねてくれる人の方がずっと格好良いよ。

でも、もうそういうのが共通の常套手段になっちゃってるんですね、男の子たちの間では。


もちろん男性も、断られるのが怖いと思う気持ちがあるのはわかります。

だから、そういう関係になりたいのなら、女性からも積極的にダイレクトに相手にとって分かりやすくアプローチしたって良いと思う。

あくまで、お互いの同意の下で。そういうのがもっと自然な世の中になればいいなあ。



あとは、男性と深く話していくと、女性の性についてあまりにも知識がないことに驚くことがあります。

もちろん、知る機会がなかった、誰にも教えてもらえなかったのだから彼等を責める気はありません。

私の夫も、わりと最近まで生理が1週間近く続くものだということを知りませんでした。

不覚にも血を見られた時は、動揺して「痛くないか?」と尋ねてきたので、怪我の血と混合して考えているところがあるのかもしれません(実際に経験しない立場では、そう思っても仕方ないのかもしれません)。


また、中には生理が月に一度一日で終わると思い込んでいたり、尿意や射精と同じようにコントロールができるものだと考えていたり、挙げ句の果てにはセックス体験がある人しか生理が来ないと思っている人もいるのだそうです。

災害時に生理用品を「贅沢品だ」と言って物資の受取を拒否した男性がいたり、受取ったものの一人につき一個しか配られなかったり等ということがあったという話も聞いたことがあるので、生理の詳細について知らない男性は意外に多いのかもしれません。


一方で、女性側から「男が生理について詳しいなんて気持ち悪い」と言う声もまだまだ多くあるように思えます。

私の母も、頑なに父の前では娘達に下着や生理用品は隠すように指示していましたから。

でも、私は、少なくともカップルや夫婦の間では、もう少し相手の体について知っていて良いと思うんです。

もちろん女性もまだまだ男性の体のことで知らないことはあると思うから、必要なことがあれば教えて欲しい。


そう思うようになったのは、以前、私が毎月の生理が重すぎて子宮内膜症子宮筋腫の疑いを感じ、病院に行ったことがあったからです。

その時考えたのは、もし何か病気があって重症化していたら「私は子供が産めない可能性もあるんだ」ということでした。

そうなっては、配偶者である夫はもう私の生理と無関係ではないと思えたのです。

結婚していなくても、妊娠する可能性がある限り、相手の女性の体のことは男性にとって無関係ではありません。

ある程度詳しく知る義務があると思います。

だから、私はなるべく夫にも自分の体のことや、一般的な生理の知識を、今後も引き続き恥ずかしがらず伝えていかなくてはな・・と今は思っています。


そうして互いに情報共有していくことが、男女が無知によって傷つけ合わずに済む予防策なのではないかと、改めて思うのでした。

というわけで、若干話が逸れましたが、「13の理由」なかなか重いドラマでしたが、色々と考えるきっかけになりました。

結局長くなっちゃったんだなあ、もう。まあいいか。